厚年基金廃止議論「制度の変遷」

ここでは、厚生年金基金の発足の経緯から、多くの企業の基金解散までの経緯と、制度 の変遷を確認したいと思います。

EH095_L_1厚生年金基金制度は、1966年にスタートしました。厚生年金基金は、自社の厚生年 金加入者に上乗せ給付を望む一部の企業が任意・自主的に設立したもので、厚生年金保 険料のうち代行部分相当である免除保険料を借り受けて、自己責任で運用したものです。

その後、厚生年金基金は上乗せ給付と代行部分の積立金を統合運用できることが認識され普及し、一時は最大1200万人が加入する企業年金の中核制度になりました。

しかし、バブル崩壊後の90年代後半からの運用環境の悪化や会計基準変更により、代行制度のリスクが認識されるようになり、大企業単独やグループ会社の連合からなる厚生年金基金は代行返上し純粋な企業年金に移行しました。現在残っている基金の多くは同業種の中小企業により構成された総合型の基金です。

代行部分のために保有する積立金である「最低責任準備金」は、基金解散時に厚生年金に返還されることになりますが、経済環境の後退を受け、この最低責任準備金の計算方法が1999年10月から見直され、厚生年金本体と同じ利回りを確保すればよいという「ころがし方式」に代わりました。

この「ころがし方式」では、代行部分の給付債務と最低責任準備金に乖離が 生まれ、2014年改革で、乖離を埋める資金を厚生年金本体から基金へ交付することになり、基金と厚生年金本体の財政の一体化が進みました。 この結果、基金は預かり金運用と支払代行組織の性格を強めた形になりました。

制度改革を得ても、不況業種の総合型基金や、年金受給者比率の高い基金の財政は悪化し、 解散したくても基金内規約により解散できないというジレンマに陥っている基金が半数に達するという状況に至っています。

次回は、厚生年金基金制度について掲載予定です。
(2013.1.24)