国民年金保険料の「免除」「猶予」制度
「必要な老後資金2000万円不足」騒動は、マスコミ報道の過熱で現役世代、年金受給世代を含めて広く知れ渡りました。
この数字は厚生年金の加入期間が長く、厚生労働省が算出している標準家庭(夫婦)の年金額を基に計算されたもので、この標準年金額を下回る年金受給世帯が多いのも事実です。
将来の年金制度への疑問、不満があるかもしれませんが、少しでも老後資金の不安をなくすために上手に年金制度を利用することも大切になります。
ここでは自営業者などが対象となる国民年金保険料の納付に関して、経済的な事情その他で保険料を納付することが困難な場合に利用できる「免除」「猶予」制度の概要をご紹介します。
<保険料免除制度>
保険料免除制度は、保険料を納めなくても良いという制度で、前年の所得に応じて「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類があります。
下記はそれぞれの免除の対象となる前年所得が、以下の計算式で計算した金額の範囲内にあることが必要です。
<全額免除>
前年の所得=(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
(例:扶養親族数が3人の場合の前年所得=(3+1)×35万円+22万円=162万円
<4分の3免除>
前年の所得=78万円+扶養親族等控除額(※)+社会保険料控除額等(※)
<半額免除>
前年の所得=118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
<4分の1免除>
前年の所得=158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
※扶養親族等控除額と社会保険料控除額等は、年末調整・確定申告で申告された金額です。源泉徴収票・確定申告控等で確認してください。
<保険料猶予制度>
保険料猶予制度は、保険料の支払いを一定期間待ってもらうことができる制度で、50歳以下の人が対象の「納付猶予」と、学生が対象となる「学生納付特例」があります。
納付猶予の所得基準は本人や配偶鵜者が対象で、同居の親などの所得にかかわらず認められます。学生納付特例も本人の前年の所得が目安となります。
<保険料猶予制度の所得基準>
前年所得が以下の計算で試算した金額の範囲内であることが必要です。
前年所得=(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
<重要なポイント>
「免除制度」は、免除された期間は受給資格期間に含まれ、免除の割合で減額された年金額へと反映されますが、「納付猶予」と「学生納付特例」は受給資格期間には反映されますが、年金額には反映されません。
免除や猶予による年金の減額を避けるためには、後から保険料を納める追納制度を利用します。
過去10年以内の分を遡って収めることができます。
2020年2月26日